ツバを吐く

人は自分にとって善い行いしかしない、みたいなことを哲学者のだれかが言っているというのを読んだことがある。
深層心理で自分自身が気持ちの良い方にしか行動できない、と。

路上でツバを吐く人をたまに見かける。「汚い」と思う。それと同時に、不思議に
思う。
「なんでそんなことするんだろう」と。

自分は生まれて26年、一回も外出先でツバを吐いたことはないし、ツバを吐きたいと
思ったことも無い。

「利便性」と「ファッション性」、どちらの観点から見ても理解できない。

「利便性」でいうと、「ツバを吐きたい、でもいますぐ吐ける場所がない。じゃあ、ここで吐いちゃえ」ということだろう。

外でツバを吐きたくなる口内状況ってなんだ。そんなことあるのか。病気か。
自分の口にツバが溜まる状況って、歯磨きした直後か、すっぱいものを想像したときぐらいだ。
外を歩いてて「あー、口の中にツバが溜まってきた。吐きてー」ってほんとにそんな瞬間一回も無いぞ。
第一、飲み込めばいいことだし。

じゃあ、「ファッション性」。 「ここでツバを吐いて、かっこよく見られたいー」と
思って吐いているのか。

公衆の面前で体液出してなにがかっこいいんだ。
ただただ「汚い」、「気持ち悪い」としか思わない。で、この感覚は稀ではないだろう。なぜなら女性が嫌に思う男性の行動ランキングみたいなので、「路上でツバを吐く」、がランクインしているのを見たことがあるからだ。
メジャーリーガーが吐いてるの見ても「カッコいい」とは思わない。
「向こうの人はそうするんだー」としか。

検索したら終わりな気がして、検索しても出てくるのか知らんがとにかく
理解が出来ない。
タバコか?ガムか?ツバを吐くのがめっちゃカッコいい主人公の俺が読んでないジャンプ作品がある?

自分はタバコは吸わないけど、タバコを吸う人の「意味」は分かる。
ニコチンの接種(利便性)+吸っている姿のかっこよさ(ファッション性)。
ニコチンの気持ちよさは知らないが、吸っている姿はカッコいいと思う。
自分は吸おうとは思わないが「吸う意味」が分かる。

路上でいえば、「ポイ捨て」はダメだけど、やる意味は分かる。
今すぐこのゴミを捨てたいけど、捨てる場所がないからその場に捨てる。

路上でツバを吐くのは、ツバを吐きたくなる身体の状況も分からないし
路上でツバを吐いてる姿をカッコいいとは全く思わない。
だから意味が分からない。理解が出来ない。

「理解ができないもの」に人間は恐怖を怯えるらしい。
ゴキブリがあんなに恐れられているのも「意味が分からない」かららしい。
あのフォルムもそうだし、あんなに太古から生き延び続けていて、いつのまにか
家にいるのが「意味が分からない」から怖い。
路上でツバを吐く人に自分は恐怖を覚える。

先日、23時頃、隣駅を歩いていたら駅前のバスを待つところに良い歳した男女5.6人が
缶ビールやおつまみを持って「プチ宴会」をしていた。
恐怖だった。

「なにしとんねん」、と。「どういう人生を送ったらこの時間にこんな場所で酒飲む
人間になるんだ」、と。
別に絡まれたりしたわけじゃないし、自分はただの傍観者だったので苛立ちとかは無くただただ気味が悪かった。


「利便性」でいうと、絶対どっかお店に入るか家に帰ったほうがいいだろ。
せめて公園とかだ。

「外飲み」は理解できる。
「お店入るほどじゃないけど、ちょっとコンビニでお酒買ってここらへんで飲もうか」みたいなのは、意味が分かる。自分も経験がある。その瞬間において、それが最適解な時間や人数やテンションがある。

ただ、これは言葉では難しいのだが、自分が見たその集団はそういう「外飲み」でも
なかったのだ。

まず、その駅が急行が止まらない、でもなにもないわけではなくて駅前も結構人の居る絶妙な駅なのだ。
そして、その駅は出口が2個あって、駅を出た人の半分が通る出口の目の前の
バス停を待つ椅子に座ったりして飲んでいて、人数も5.6人、とちょっと多い!

「新宿のガードレール付近で男3人で外飲み」じゃなく、
「急行の止まらない駅のバス利用者が使う椅子、しかも駅から出てくる人にめっちゃ
見られる場所で男女5.6人で外プチ宴会」なのだ!! 書いてても意味が分からない。

そもそもどういう集まりの人たちなんだ、どういう会議・話し合いでここで飲むことになったんだ。考えれば考えるほど恐怖を覚える。
めっちゃ人に見られて嫌でしょう?(ファッション性)。
この時期、蚊とか刺されるでしょう?(利便性)。
というか、バス待つ人が使う場所だから(バスが通ってない時間にしても)、
普通に迷惑行為だろ。

その時間にやっている居酒屋も近くにあるし、なんなら公園もある。
店に入るほどでもないならお開きにするか、公園で飲め。

なんだったんだろうあの人たち、と昨日その駅を通るときにふと思い出し、
「ブログに書こうか」と考えていたら、
全く同じ場所で同じ人たちが飲んでいた。

恐怖とともに、心の中でツバを吐いた。